The Story of the Tea Garden

目指す味わいから逆算するお茶づくり

― 静岡県本山地区「森内茶農園」のストーリー

目次

幅広い茶づくりと 独自の工夫

Tea Garden Tales

静岡・本山地区にある森内茶農園は、江戸時代から九代続く茶農家さん。緑茶、半発酵茶、紅茶と幅広い茶種に取り組み、それぞれの品種がもつ個性を丁寧に引き出してきました。

一番茶を煎茶に、二番茶を紅茶に製茶するなど季節に応じた工夫をしつつ、一番茶の摘採期で肥料をしっかり切り、余分な成分が残らないようにしています。そうすることで、すっきりとした味わいと香りの調和が生まれます。

お茶づくりでは、まず「どんな味と香りを目指すか」というゴールを定め、それに合わせて品種・園地・栽培方法を選びます。夫婦二人三脚で、土地の力を生かしながら、冷めても美味しく、やさしい飲み心地のお茶を届けています。

自然とともに歩む茶園

小さな山々が折り重なる本山地区に位置する森内茶農園には、かまぼこ型の茶畑もあれば、自然仕立ての茶畑もあります。土地には「ビリ」と呼ばれる砕けた石の粒子が多く含まれ、水はけが良いのが特徴。根がよく広がり、土中のミネラルをしっかり吸収します。その結果、香り高く奥行きのあるお茶が育まれます。

山の斜面は作業の手間がかかりますが、風通しがよく冷気がたまりにくいため、霜から新芽を守ってくれる頼もしい環境でもあります。

紅茶づくりへの挑戦

紅茶づくりを始めたのは1999年。「緑茶と同じチャノキから紅茶が作れる」とテレビで知ったことがきっかけでした。

「手作りの紅茶とケーキで、家族でおやつの時間を楽しめたら…」そんな奥さまの思いから、他の農園から分けてもらった在来種の茶葉で初めての紅茶作りに挑戦。翌年からは自園の「やぶきた」で紅茶を仕立て、さらに「べにふうき」などへと品種を広げていきました。

多彩な品種と和紅茶

2025年現在、森内茶農園では香りに特徴がある品種を中心に、多彩な紅茶を手掛けています。

どの品種も「香りだけ」「味だけ」に偏らず、飲み心地全体のバランスを大切に。温かいうちだけでなく冷めても美味しさが続き、心地よい余韻を残す紅茶こそ本物だと考えています。

和紅茶の品種一覧(2025年時点)

静岡生まれの魅力あふれる品種

香駿

静岡県で生まれ、森内茶農園がいち早く導入した品種・香駿。2025年9月に開催したカスタムティー主催のワークショップでもご紹介しました。

ミルクのように甘くオリエンタルな香りは、思わずうっとりしてしまうほど。甘み・旨み・渋みが絶妙なバランスで引き立てあい、複雑で丸みのある香りが重なり合います。茶液の温度が下がるにつれて香りが少しずつ変化し、飲むたびに新しい表情に出会える紅茶です。

和紅茶香駿

和紅茶 香駿の魅力をチェック!

香駿(こうしゅん)は、かつて「駿河」と呼ばれた静岡県中部に由来して名付けられました。 誕生の地・静岡から栽培がスタートして以来、華やかな香りが評判を呼び、いまでは福岡・宮崎など温暖な地域にも栽培が広がっています。

開催レポート | 和紅茶テロワール体験

静岡県の2つの産地(磐田原台地と本山地区)で育った「香駿」を飲み比べ。 土地の環境や作り手による香りや味わいの違いを実感していただきました。

茶園から広がる体験

本山の自然に囲まれた森内茶農園では、代々受け継がれてきた茶づくりの技と、個性豊かな茶畑を次の世代へとつなげるため、日本茶ツアーを開催しています。

 

ツアーでは、日本茶インストラクターによる解説のもと、茶畑を実際に歩き、自然とともにお茶が育つ現場を体感。品種の違いや摘採時期による香味の変化を、築150年の古民家の中でじっくり飲み比べることができます。

 

美味しいお茶を味わっていただくのはもちろん、ちょっとしたお茶の知識も持ち帰っていただけたら嬉しい――。

 

そんな想いから生まれた体験型のツアーは、新しい日本茶の魅力を発見できる、心に残るひとときになるはず。ぜひ一度、現地で体験してください。

茶園情報

取材・文

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水長瑠美

CUSTOM TEA代表/日本紅茶協会認定ティーインストラクター/食品衛生責任者

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