インド

ダージリン

ダージリン紅茶は、北東インドのヒマラヤ山脈のふもとで栽培され、寒暖差が大きい土地柄が生み出す豊かな香りと深い味わいで世界的に知られています。世界三大銘茶のひとつとして、その極上品には驚くほど高値がつくことも。そんなダージリンの歴史や特性を紐解くと、日本の和紅茶との共通点が見つかります。

目次

産地

北東インド ダージリン(西ベンガル州)

標高

標高8000mを超える峰が14座集まってできたヒマラヤ山脈、そのひとつにカンチェンジュンガと呼ばれる山があります。エベレスト、K2に次ぐ世界第3位の標高を誇るその山すそに、世界で最も有名な紅茶の産地「ダージリン」があります。

一日の寒暖差は夏季をのぞいて摂氏10℃にも達し、辺り一面は常に霧で覆われています。7つの険しい谷に分かれたその場所に点在する畑は、重機が入り込めない急斜面に作られており、ゆえに茶の剪定から茶摘みまでをほぼ人力で賄っています。熟練の手作業と畑ごとに異なる地勢や気候の違いが、味の違いを生む理由のひとつになっています。

香味・水色の特徴

日本と同じ四季のあるダージリンで、茶摘みができるのは3月~11月頃まで。

気候や気温の差もまた味わいに直結するため、年に3度のクオリティーシーズンごとに異なる水色・風味の紅茶が生産されています。

セカンドフラッシュ

5~6月

“紅茶の女王”と称えられるほど、一年の中で香味が最も充実。卓越したものには「マスカテル・フレーバー」がある。

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インド政府ティーボード認証のロゴ。ダージリンのロゴは下段・左から2番目。

本物のダージリンである証明

インド政府お墨付きのロゴをチェック

ダージリンで生産される紅茶は、年間わずか約8,000トン。中でも極上品は5%程度と言われています。一方で市場には、その10倍もの「自称ダージリン」が出回っているのだとか。

現在、ダージリンの茶葉はそのすべてが茶園や生産時期に応じてロットで管理され、ロットごとに価格も風味も異なります。100%混じりけなしのダージリンには、インド政府紅茶局(ティーボード)お墨付きのロゴマークをつけることが許可されていますから、ぜひ購入の際に、パッケージや販売元のホームページなどをご覧ください。

品種と製法

農園ごとに多様な品種を栽培

標高差が大きいダージリンの茶園。同じ茶園で標高差が1800mあることも。
中国種は葉が小さく耐寒性に優れる。アッサム種は高温多湿の環境に適し、葉が長くて肉厚。
伸びた枝の一部から「さし穂」を作り、土の中に挿して管理。根が伸び、苗木として植え付けられるまで育てる。

ダージリンの紅茶作りは、スコットランド出身の“プラントハンター”ロバート・フォーチュンが中国から茶樹を持ち込んだことに始まりました。同じ茶園内でも標高差が大きいため、標高の高い場所では耐寒性に優れた中国種(チャイナ)、標高の低い場所ではアッサム種というように様々な品種が栽培され、それが茶園ごとの個性や魅力につながっています。

加えて、近年増えているのがクローナルと呼ばれる品種。病気に強く、風味が極めて優れた品種の枝を挿し木で増殖させ、優良な茶樹と同じ遺伝子を持つ新しい茶樹を生み出す技術です。特に有名なクローナル品種AV2 (Ambari Vegetative 2)は、花や果実にも似た華やかな香りが特徴です。

茶葉の個性を引きたてるオーソドックス製法

製法は、そのほとんどが「オーソドックス製法」。かつて中国で人の手で行われていた製法をベースに、改良して機械化させたこの製法は、時間やコストがかかるため、今ではダージリンの他、アッサムの一部、スリランカ、中国、日本(和紅茶)などの限られた地域でしか行われていません。人の手と機械で丁寧に加工されたオーソドックス製法の茶葉を、時間をかけてゆっくり抽出することで、繊細で豊かな香味を楽しむことができます。

おいしい淹れ方

汲みたての新鮮な水を沸かして熱湯に

ダージリンらしい水色、香味を十分に引き立てるために、おすすめなのが英国式のゴールデンルールに沿った淹れ方です。100℃の熱湯を使うのが基本ですが、「ファーストフラッシュ」を淹れる場合は、少し冷ましたお湯を使うことで、渋みが強く出すぎるのを防ぐことができます。

英国式ゴールデンルール 5つのポイント

  • 汲みたての新鮮な水を使います。ふつうの水道水でOKです。
  • 茶葉の分量を、はかりやティースプーンできちんと量ってください。
  • 香気成分や紅茶ポリフェノールがしっかりでるように、ボコボコと沸騰した直後のお湯を、できるだけ冷まさずに注ぎます。
  • お湯を注いだらフタをして、3分~5分を目安にじっくり蒸らします。
  • 注ぐのは、最後の一滴まで。ベストドロップやゴールデンドロップとも呼ばれます。

茶葉の量

3g

湯量

150ml

温度

90~100℃

蒸らし時間

3~5分

ペアリング

スイーツはもちろん、食事にも

ペアリングとは「おいしい組み合わせ」を見つけること。全く異なる食材同士でも、香りや味わいに共通点があれば、それがおいしさを決定づける要因になるといわれています。

紅茶の豊かで複雑な香りは、ほかの香りと混ざり合うことで味わいを補完したり、余韻を感じさせてくれます。渋みは口の中をさっぱりさせて、次の一口をおいしく感じさてくれます。洋菓子だけでなく、和菓子や食事に合う紅茶もたくさんありますので、ぜひご自分なりのベストペアを見つけてください。

1st×和菓子

茶葉の外観だけ見ると、まるで緑茶のようにも見えるファーストフラッシュ。これは冷涼な気候で製造されるがゆえに、酸化発酵が浅く作られているためです。 その若葉のようにみずみずしい風味に、ぜひ「和菓子」をあわせてみてください。心地よい渋みが、軽い口当たりの羊羹や落雁などの菓子によく合います。
GOOD!

2nd×白身魚のポワレ

「紅茶のシャンパン」と称えられるほど、フルーティーで花にも似た芳醇な香りが特徴。まさにワインやシャンパンのように味わっていただきたい紅茶です。 私の一押しは、魚介系の洋食と一緒にアイスティーにしていただくこと。魚介の甘みとうまみがぐっと引き立つのと同時に、適度な渋みのおかげで口の中はさっぱり快適です。

おすすめカスタマイズ

華やかな香りを活かしたアレンジを

香りを存分に楽しむために、「ダージリンは混じりけなしのストレートで」と決めている方も多いかもしれません。そんな真のダージリン好きにこそ、楽しんでいただきたいレシピを考えました。香りの魅力がさらに広がって、ダージリンの新たな一面がきっと見つかるはずです。

ダージリン・ヒマラヤサンライズ

日本紅茶協会主催「ティーインストラクターオブザイヤー2024」準グランプリ受賞作です。甘く華やかな「ダージリンセカンドフラッシュ」にライチを組み合わせて、香り高い一杯を作ってみませんか?綿菓子や琥珀糖をトッピングすれば、見た目にも楽しいパーティードリンクの出来上がり。
受賞作

歴史

ダージリンで、今でも中国種が栽培される理由とは?

ダージリンの紅茶栽培は、19世紀のイギリス植民地時代に始まりました。当時のイギリスでは、中国茶の消費量が年々増加し、その代金を支払うために大量の銀が国外へ流出していたのです。

その状況を打破すべく引き起こしたアヘン戦争でイギリスは中国を破り、紅茶の歴史は大きく動き始めました。中国から持ち込んだチャノキのほとんどがうまく育たない中で、イギリス人の避暑地として開発されたダージリンは、その栽培に適した地であることがわかったのです。

ダージリン紅茶史における重要な人物

At that moment, tea history was made.

和紅茶とのつながり

日本を代表する紅茶用品種のひとつ「べにふうき」は、「べにほまれ」というアッサム系品種を母に、中国・ダージリン系の品種を父に持つ“紅茶のサラブレッド”とも言える存在です。

和紅茶「べにふうき」とは?特徴・味わい・おすすめの淹れ方を解説

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